国際教育センターホーム IE-IEレター* Letter 2. ~電通大からの留学と、電通大への留学~ 対談:加藤彬紘さん、ロムロ・チャヴェスさん

IE-IEレター* Letter 2. ~電通大からの留学と、電通大への留学~ 対談:加藤彬紘さん、ロムロ・チャヴェスさん

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「電通大からの留学と、電通大への留学」 対談:加藤彬紘さん、ロムロ・チャヴェスさん

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加藤彬紘さん、 ロムロ・チャヴェスさん
KATO Akihiro and Romulo CHAVES

CIPE: まずはお二人の、自己紹介をお願いします。
加藤:電気通信大学大学院情報理工学研究科基盤理工学専攻修士1年の加藤彬紘です。専門は半導体量子ドットであり、量子計算デバイスや高効率太陽電池・レーザーへの応用に向けた半導体ナノ構造の研究をしています。
これまでの海外経験としましては、1年次にアメリカ・ワシントンD.C.に外務省主催の“KAKEHASHI”プロジェクトで派遣され、メリーランド大学やウィリアムズアンドメアリー大学での国際交流、日本大使館訪問などを行いました。2年次の夏にはデンマークのフォイスコーレ(高校と大学の間のギャップ・イヤーなどで芸術や人文を学ぶ公立専門学校)にて国際ボランティアに従事しました。
その後2年次の冬および3年次の夏にはメキシコシティのメキシコ国立工科大学で研究留学、4年次にはブラジル・サンパウロ州のカンピーナス州立大学にて研究留学を行いました。
 
ロムロ:日本の文部科学省国費留学生としてブラジルから来日、電気通信大学II類先端ロボティクス専攻のロムロです。2017年に来日、1年間東京外国語大学にて日本語を学んだ後に電気通信大学に入学しました。
 
Q. ロムロさんはなぜ日本に来ることを決めたか
ロムロ:高校生時代に海外の大学を目指した際に、国費留学生として在学中の日本政府からの充実した支援や日本が最先端をいくロボット分野で学びたいと思った故に日本の大学への進学を決めました。
 
Q. 加藤さんはなぜ留学したか
加藤:交通や通信が発達し地球の反対側までも行けるようになった現代において、他の地域の文化も言語も食も違う人々と交流しながら協働したいと考え留学しました。2年次にデンマークで国際ボランティアに従事する前はまともに英語を話せませんでしたが、現地の様々な出身の人々と協働で生活するうちに実用的な英語を習得しました。その経験を基にメキシコ国立工科大学への研究留学に挑戦、ラテンアメリカへの更なる興味からブラジルにも留学しました。
 
Q. 日本とブラジルのカルチャーショックは?
加藤:ブラジルは広い(笑)。国内線でサンパルロからアマゾンまで5時間も掛かったのには驚いたし、家や大学の大きさや近所間での移動の遠さなど全てのことにブラジルの大きさを感じていた。
 
ロムロ:たしかに(笑)。東京ではいつも狭いなと思うし、渋谷など人口密度が高い場所と、人口は多くても十分に広いブラジルの都市との差を感じる。ちなみに私の出身の州はドイツよりも広い。
 
加藤:あとブラジルの多民族国家について。日本と比べると、イタリア系、ドイツ系、日系など様々なブラジル人がたくさん住んでいるブラジルでは、それぞれの人種の人々がそれぞれのルーツを持ちながらも研究室や会社で協力しあっていることは私にとっては新鮮だった。
 
ロムロ:それはそうですよね。日本ではほとんどの人が日本人の外見を持つ一方で、ブラジルではあらゆる人種のブラジル人がいるため、初めて会った時には外見に寄らずブラジル人として接する。加藤さんがブラジルに居たときは、まずはポルトガル語で話しかけられましたよね。
 
Q. ロムロさんの感じた日本とブラジルの違いは?
ロムロ:アイスコーヒーに驚いた(笑)。ブラジルではフラペチーノなどを除いてコーヒーは絶対ホット!
 
Q. 日本とブラジル(海外)の違いは?
加藤:私はむしろ日本も世界も共通している部分が多いと感じた。例えば学生でいうと、日本では「海外の学生はもっと優秀だ」と言われることが多いと思う。でも実際は日本でちゃんと勉強した分は海外の大学に行っても評価される。世界中どこでも優秀な人や勤勉な人、怠けている人や何かに打ち込んでいる人がいるという点は共通している。それを知ったことで、日本で教育を受けたことに自信が持てるようになった。
しかし、ブラジルの学生の方が熱心かも…。
 
ロムロ:え???来日する前は日本の学生は1日16時間勉強するって聞いてた。日本の学生のイメージは“非常に”真面目。
 
Q. 実際の日本の学生のイメージは?
ロムロ:みんな真面目かなと思ったけど人それぞれ。ただ日本人の英語に対する自信の無さは感じる。英語で手助けを頼むと逃げられるけど、日本語だと親切に教えてくれる時とか。日本人は高校まではきちんと英語やっているのに自信がない。仲良くなるまでは英語で話さない人がいて、仲良くなってから英語を聞いたら「想像より上手い!」と思うことも多々ある。
 
Q. ブラジルと日本の生活の違い
ロムロ:東京では車が要らない。電車でどこでも行けて交通が発達している。このような街の構造は興味深い。日本は治安が良い。
 
Q. 電通大が留学生の支援でできること
ロムロ:日本語ができない間はメンターがいると良かった。引っ越しなどの手続きは厳しかった。
 
加藤:私、日本人向けの学生メンターをやっているので、近いうちに外国人留学生向けメンター活動にも取り組む予定です!コロナの時代では新たな交友関係を構築することの難易度が高いので、そこを改善できればと思います。
 
ロムロ:1年生でまだ自分の日本語が微妙だったときに受けた定期試験は、日本語によるものだったので厳しかった。先輩とのやり取りも少なく、情報を得にくかったので。留学生も先輩と知り会える機会がもっとあれば良いと思う。
 
Q. 日本人の学生がもっと留学するためにはどうすべき?
加藤:私は世界展開力強化事業でメキシコとブラジルに行きましたが、渡航費や生活費の支援に加えて、他大学の教員や元JICAでブラジルに駐在していた方などに語学や文化、歴史を学ぶ事前学習がありとてもよかった。世界展開力強化事業のように派遣対象地域を絞ってでもサポートが充実していると行きやすいし、充実した留学になると思う。また、自分が1年次でアメリカに短期留学したように、海外に行き交流するきっかけがあったことも重要だと思う。
 
ロムロ:そういう現地情報をまとめて得る機会はすごく大切だよね。ブラジルから日本に関する情報を探そうとしても探しにくかったりする。
 
Q. 日本の食べ物は?
ロムロ:ブラジルの寿司は好きじゃなかったけど、日本に来てから好きになった。あとカレーや天ぷらも好き。
 
加藤:ブラジルの具だくさんの焼きそばとか日本人街の天ぷらもとても美味しかったけどな!あとブラジルではフルーツが美味しかった。カシューナッツの実cajuのジュースとか!アサイも!フルーツ安いし。
 
Q. 将来の進路
ロムロ:大学院に進学してその後は日本で就職したい。ロボット分野で。
 
加藤:就活しています!これまでの経験を活かして世界や中南米に関わるプロジェクトができる会社に就職したい。自動車やプラント、資源開発など。
 
ロムロ:スペイン語とかまた勉強する?
 
加藤:やる!外語大の単位互換制度などでスペイン語の授業とか取りたい。ロムロさん日本語は?
 
ロムロ:漢字を書くのは難しい(ロムロさんの日本語はほぼ完璧です)
 
Q. 電通大生へのアドバイス
加藤:一度海外に出てしまえばその後のハードルは下がるので、一度海外での生活を体験することはすごく良いことだなと思う。できれば自分の研究を海外の大学や企業で行う研究留学に行き、ひとつの物事に現地の人と共に取り組むのが良いと思う。
 
ロムロ:他の国に行って、他の言語・文化を学び、他の人を知るということは、自分の世界を拡げ成長できるので良い体験だと思う。国際交流以外では大学では先輩との繋がりを作って新しいことに効率よく取り組むことが大切だと思う。
 
Q. 留学して良かったこと、悪かったこと
ロムロ:他の文化・言語を学べたことは良かった。母国語のポルトガル語なら工学ももっと素早く吸収できただろうが、すべての授業を日本語でやるため日本語の習得も進めなければならなかったことは厳しかった。
 
加藤:良かったことは英語に対する抵抗がなくなった。外資系企業での面談や外国人との会話にも困らない。多様性を学べたことも良かった。しかし、電通大でも半導体分野で十分強い研究室にいながら海外に行くことで、日本での研究に費やせる時間が減ったことは欠点かも。でもそれは今後人一倍頑張ることで巻き返せると思っている。
 
CIPE: 留学する際のご両親などの反応は?
 
ロムロ:合格したときには両親は心配したと思う。でも現代ではSkypeなどで連絡できる。事前に日本での生活の準備をすることで問題なかった。
 
加藤:欧米はあまり心配されなかったが、メキシコへ行ったときはさすがに心配された。でも気をつけることを約束して出掛けて、その後無事に帰国したことで2回目のメキシコやブラジルのときはそこまで心配されなかった。
 
CIPE: 留学に恐怖があるってどういうことでしょう。
 
加藤:日本のニュースの影響で、アメリカの学生や研究がすごく優秀であるという印象があって、アメリカに行くと劣等感を感じるという先入観があると思う。「行っても無駄だ」という恐怖が多くの人にある。
 
CIPE:戦後はアメリカに追いつかなければいけないという違った焦りがあり、アメリカに行かねば!という気持ちがあった。
 
加藤:そういう気持ちは私たちの世代にはなくなってしまった。アメリカに行き活躍する人はごく一部の優秀な人で、普通の人が行っても落ちこぼれるという先入観が多くの人に植え付けられているように感じる。
 
CIPE:それは間違いだよね。日本の学生が持つ劣等感は正していかなきゃいけない。
 

※この記事は2020年9月4日(金)にZoomで行われた対談に基づいています。
なお、以下のサイトで他の学生たちの様々な体験談が読めます。

http://www.fedu.uec.ac.jp/studyabroad/voice/
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作成日:2020年10月13日 / 更新日:2020年11月30日