「SpiderFlow」は、「SpiderのようにWeb上で動作するワークフロー」と意味した。
現状のワークフロー製品は、専用のサーバ・ソフトとクライアント・ソフトで構成されるのが一般的であるが、インターネット環境が備わっていれば、WWWサーバとWWWブラウザでワークフロー管理システムが利用できれば便利である。
また、アドホック型やコラボレイティブ型の非定型業務をワークフロー化する場合は、プロセス定義(経路設定)と実行を別の人が行なうのではなく、簡単にプロセス定義し、直ちに実行できることが要求される。定型的な業務のワークフロー化では、プロセス定義をシステム部門が行なうということが普通である。しかし、稟議支援では経路を変えたいことがあり、これでは使いにくい場合がある。
このような要求に答えることをねらい、WWWシステムと電子メールを用いて、インターネットで使用することを想定した非定型ワークフロー管理システムのプロトタイプ__SpiderFlowシステム(以下はSpiderFlow)を試作した。
SpiderFlowはアドホック型業務向けに、発信者が簡単にWWW上でプロセス定義を行い、直ちにワークフローを開始する。ただし、定義した経路データは保存され、再利用できる。また、利用者の管理、回覧者の回覧、進捗の制御ともにWWW上で行われる。
SpiderFlowはインターネット上で運用され、動作環境としては、UNIX用のWWWサーバ、クライアントはWindows系、Macintosh系、SunOS系のどちらでも利用できる。
回覧文書本体はHTMLで作成し、WWWサーバに登録する。すでにインターネット上にあるWWWページはそのまま回覧文書として使える。利用者はどこからでも発信できる。また、図表、画像、音声などのWWWで使えるファイルはすべて「回覧」できる。発信者は回覧の制限時間を設定することもできる。
SpiderFlowは、回覧経路に従って回覧者へ回覧文書(WWWページ)のURLを電子メールで回覧者を通知する。
回覧開始してから、発信者は回覧の進捗状況を監視でき、回覧経路の変更、中止によりそれ以後の回覧の進行を制御できる。
また、システムは発信者による制定した制限時間で回覧者へ督促し、所定時間内に回覧者から返信がない場合はその回覧者を飛ばして次の回覧者へ回すか、全体の制限時間がオーバーになれば、回覧を中止し、発信者に時間オーバーの通知メールを送る機能を持っている。
回覧者は、WWWブラウザで回覧文書を閲読し、必要であればコメントをブラウザ上で書くことができる。そのコメントもそれ以後の回覧者に表示される。また、回覧者は回覧内容を不適切と判断したら、回覧を中止し、発信者に返送することもできる。
すべての回覧の記録は制御情報ファイルとして残される。
"速水治夫,申健翔:ワークフローの基本機能と適用業務", 「月刊イントラネット」,3月号, 1998.