電通大の国際交流
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白取 寛章知能機械工学専攻 博士前期課程

派遣先:中国 中国 華南理工大学
派遣期間:平成23年8月19日 ~ 平成23年9月16日

研究テーマ:圧電素子を用いた微細作業用マイクロチルティングステージの開発と応用

活動の概要

本研究では、走査型電子顕微鏡(SEM)内での微細操作環境を実現するため、SEM内で使用可能な小型ステージの開発を行っている。今回の派遣では華南理工大学の田研究室において、試作済みのステージを稼働するための新しいプログラムの作成を行った。また、現地にあるマイクロスコープで動作を観察した。

マイクロチルティングステージを稼働するために必要な機材は、PC・電圧出力デバイス・圧電素子駆動用アンプ・ステージ本体である。電圧出力装置として、USBでノートPCと接続できるナショナルインスツルメンツ社製NI9263を選択し、ノートPC・NI9263・6チャンネルアンプ・ステージ本体を海外に運搬した。現地では、システム開発ソフトウェアのLabVIEWを用いて、小型ステージを任意方向の軸に対して回転運動させるプログラムを作成した。マイクロチルティングステージは、アクチュエータである6つの圧電素子に電圧を入力することで指定した方向に駆動させることができる。そのため、目標傾斜角度から指定方向に駆動させるために必要な電圧を算出する計算式の検討を行い、それをもとにプログラムを作成した。

その他の活動として、今年度の11月に参加する予定のASPEN(International Conference of Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology)2011の会場となる香港理工大学を視察した。

図1 マイクロチルティングステージのモデル図2 実際のマイクロチルティングステージ

研究成果概要

NI9263は海外での研究用に新しく用意したものだったので、まずアンプとつなぐためのケーブルの作成をしてから研究を行った。ソフトウェアに関してはLabVIEWの基本機能の習得から始め、マイクロチルティングステージを回転させるためのプログラムを作成した。最終的には、任意方向への傾斜、任意方向の軸に対して回転させるための新たなプログラムを作成することができた。図3のような傾斜角度を満たすよう駆動させるための、6つの圧電素子それぞれに入力する電圧を求める数式は従来のものとは異なるシンプルな導出法によるものを用い、傾斜させたい方向によって生じる条件を加味してプログラムを作った。また、今までの研究過程でのパラメータがすべて詰め込まれたユーザインターフェースから不必要なものを削除して一部はプログラムの中に組み込んだ。これにより以前よりプログラムを使いやすくすることができ、今後効率よく研究を続けていくことができるとともに資料としてデータを残すという点においても有意義な活動ができた。できあがったプログラムで小型ステージを動かし、現地のマイクロスコープで対象物を観察した。今後の日本での研究で、できあがったプログラムでの動作を精密に測定する。

図3 マイクロチルティングステージの傾斜角度φ及びψ

国際化に関する所感及び提言

現地の習慣では、ほとんどの学生が昼寝をする点が興味深かった。お世話になった研究室の学生は朝8時30分には研究室にいた。朝が早い代わりに昼休憩が長めで、寮に帰って寝る人や、研究室で電気を消して眠る人など、皆睡眠を取ってから午後も集中して効率よく研究を行っていた。海外で研究活動を行う上で苦労したのは、研究について説明する際に英語で話すことであった。日常会話では特に問題はなくとも、研究について議論する際には思いついたことをそのまま伝えるのに時間がかかることが多かった。国際的な研究活動をするうえで会話を有意義にするためには英会話能力の向上が必要だと強く感じた。今回、普段同じ分野を研究しているメンバー以外の多くの学生に研究内容を説明したため、今まで想定していなかった観点からの質問がいくつもあり、自分の英語での研究説明でどこが伝わりにくいのかを理解することができたので、この経験は国際学会での研究発表でも生かしたい。

作成日:2011年9月16日 / 更新日:2012年3月 8日