電通大の国際交流
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大橋 拓司先進理工学専攻 博士前期課程

派遣先:アメリカ合衆国 ローレンスバークレー国立研究所
派遣期間:平成23年3月13日~31日

研究テーマ:HIB(heavy ion beam)を用いたWarm Dense Matterの研究

活動の概要

私が滞在した、アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレーにあるLawrence Berkeley National Laboratoryでは、当研究室で超短パルスレーザーを用いて行っている Warm Dense Matter の研究を、Heavy Ion Beam を用いて行っており、また共同研究者としてなんどもレーザーセンターに来ている方が在籍していることもあり、今回訪問させていただきました。

現地では、残念なことに現在新しいイオンビーム加速器を建設している状態でほとんどの実験がストップしている状態で、研究者の方もシミュレーションや理論計算などをしている状態であったため、必然的にディスカッションが中心となり、具体的には、週に数回行われている定例ミーティングに参加、私の研究についてプレゼンテーション、LBNLで行われている研究についての論文を読み、その内容についての議論などをおこなった。

また、LBNLのSafety Policyの問題で高圧電源や工作機械などを使用した作業は行うことができないため、アシストのみであるが、図のようなメタルインジェクター、真鍮球、銅リング、高圧電源を使用した液体金属ドロップレットの開発に参加した。

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研究成果概要

Warm Dense Matter という物理を学んでいる立場として、普段行わないHeavy Ion Beam を用いた手法でのシミュレーション、データ等について議論することができ、自分の知識、視野を広げることができた。今回は期間が短かったことと、イオンビーム加速器が停止中であったため、データなどの記録として残る成果を得ることはできなかったが、科学者、技術者などスペシャリスト集団で構成され、完全に作業分業されたアメリカの研究所の巨大なプロジェクトにおける効率の良さの反面、ちょっと試してみようと思ったときにも自分では加工などを行うことのできない不便さなど、普段見ることができないアメリカの国立研究所という環境を肌で感じることや海外の研究者の考え、意見などを直接聞くことができ、これからの研究に役立つであろう、計測テクニックなどを見学することができ、大変有用な時間を過ごすことができた。

また、同じ物理現象を研究している研究所とのコネクションを強めることができ、今後より一層の情報共有、研究交流が見込めることとなった。

国際化に関する所感及び提言

まずなにより自分の英語力の無さを実感しました。しゃべる場合は何とかなっても、相手の言葉を聞き取る時にはゆっくりしゃべってもらわないと何度聞いても聞き取れないということがなんどもあり、実際にネイティブスピーカー相手に会話するということが言語を学ぶ上でどれだけ重要かを痛感しました。同時にリーディングとライティングが中心で喋る機会のほとんど無い日本の英語教育の問題点についても考えさせられました。現在の私たち日本人学生にとって英語というのは、試験で点を取るために勉強すべき教科であると考えている人が多いのではないかと思います。実際は違うと頭で解ってはいても、中学、高校、塾などで受験のためにそのようなカリキュラムで教わってきているため知らないうちに、言語でありコミュニケーションツールであるというもっとも重要な面を見失っている場合がほとんどだと思います。私のように英語が苦手であっても、指導教官である米田教授の「英語が苦手でも関係ない、なんとでもなる」という言葉通り、実際に現地に行ってしまえば、同じ人間同士わからないなりに身振り手振りを交えて片言でも意外と何とかなってしまい、それは今まで苦手意識しかなかった英語に対する考え方を改めるきっかけにもなり、短い間ですが日本語がほとんど通じない環境で自力で生活したという事実は自信にもなりました。私のように英語が苦手だと思っている人ほど、早いうちに実際に海外へ行きテスト勉強とは違うコミュニケーションツールとしての生きた言葉に実際に触れるべきだと思います。

またそれ以上に、信号待ちで隣になっただけでも、多くの人にHi, How are you?など挨拶されたり、店の入口で出会い頭に時間を聞かれたりと初対面でも全く人見知りをせず気軽に話しかけてくる、5時を過ぎるとオフィスに誰も居なくなるなど、日本ではほとんど考えられない国民性、文化の違い、考え方の違いなどを実感しました。このようなメリハリの有る生活や、誰にでも積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢など良い面は日本人も見習うべきだと思います。そしてこのような違いは、本当に百聞は一見にしかずのことわざ通り、いくらインターネットや書籍を読んだり事前に話を聞いていたとしても、直接現地に行って体験しないとわからないことであり、自分の視野を広げる意味でも、日本に留まらず外へ出ていくことの大切さを実感しました。

今後このような制度が増え、多くの学生が毛嫌いせずに積極的に海外の教育、文化などに触れる様になれば、日本はさらに発展することができるのではないかと考えます。

作成日:2011年3月31日 / 更新日:2011年11月18日