電通大の国際交流
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中田 雅也総合情報学専攻 博士前期課程

派遣先:イタリア ミラノ工科大学(Politecnico di Milano)
派遣期間:平成25年1月11日~平成25年1月29日

研究テーマ:行動最適性に基づく学習分類子システムにおける分布推定アルゴリズム:次世代データマイニング手法の探求に向けて

活動の概要

学習分類子システム(LCS)等の遺伝的機械学習手法分野における権威であるPier Luca Lanzi准教授のもとで、1/12 - 1/25の間に毎日1回のミーティングを通して、次世代の遺伝的機械学習手法としてLCSにおける分布推定アルゴリズム(EDA)の導入について議論を深めた。
まず、第一週目(1/14 - 1/18)では、進化計算部にEDAを導入するための基礎的な議論として、1)最適行動獲得に向けたLCSのための進化計算法のあり方について議論した。次に、第二週目(1/21/ - 1/25)では、EDAを導入したLCSを構築するために、2)LCS進化計算法に対するEDAの導入法について議論した。

1)では、進化計算法における効果的な親個体選択戦略について検討することで、LCSが要するメモリ量の膨大化問題の解決に取り組んだ。2)では、従来EDAの問題である、従来推定モデル構築に要する計算量の膨大化問題の解決に取り組んだ。また、論文の執筆活動として、1/18 - 1/21にかけて、特に上記の研究課題2)について国際学会論文[Genetic and Evolutionary Computation Conference(GECCO 2013)]を執筆した。

研究成果概要

今回の派遣プログラムの研究成果としては、次世代データマイニング手法として注目される学習分類子システム(LCS)の実問題適用に向けて対処すべき問題である状態行動空間の膨大化問題の解消に対して、1)最適行動獲得に向けたLCSのための進化計算法(特に親個体選択法)について確立し、2)分布推定アルゴリズム(EDA)をLCSに導入した新たなLCS/EDAを提案したことである。特に、1)はLCSの解の多様化が原因であるメモリ使用量の増加を解消した有効な手法であり、2)は従来のEDAモデルの構築時に膨大な計算量を要する問題に対して、最も計算量の低いEDAをLCSに導入可能にしたことで、この問題を解消した。また、上記の研究結果1)、2)について、当分野における最も重要な国際会議であるGECCO 2013(Genetic and Evolutionary Computation Conference)について、2件の論文を投稿した(1については帰国後に執筆、2については派遣中に執筆した)。

このような取り組みは、LCSを通して次世代データマイニング手法を確立することを目指すものである。これは、「自然界」にある実データの法則性を見出し、それを「人」に提供し、「実社会」の問題を解決することを目的としているものであり、人と社会と自然における相互のコミュニケーションを扱う「総合コミュニケーション科学」の展開に寄与するものである。

国際化に関する所感及び提言

Pier Luca Lanzi准教授は、学習分類子システムの理論研究だけでなく、ゲームAIの行動学習メカニズムへの導入等の応用研究について盛んに研究を行っている。そのため、学習分類子システムの今後の展望ならびに応用先について知識を深めることができた。特に、本派遣では、派遣先の大学に所属し、学習分類子システムについて研究しているDaniele Loiacono助教授と面識を持つことができ、研究ネットワークを広める機会を得た。加えて、Pier Luca Lanzi准教授は、同分野で最も著名な学会であるGECCO 2012でGeneral chairを勤め、Loiacono助教授もGECCO 2013でCompetition chairを勤めるなど著名な研究者である。このような最先端の研究環境における活動を通して、最先端の研究動向ならびに最新技術について理解を深めることができた。

作成日:2013年2月 6日 / 更新日:2013年2月 7日