電通大の国際交流
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太田 真衣情報・通信工学専攻 博士後期課程

派遣先:アメリカ合衆国 アメリカ合衆国・Worcester Polytechnic Institute(ウースター工科大学)
派遣期間:平成23年7月5日~平成23年8月5日

研究テーマ:コグニティブ無線の協調センシングに関する検討

活動の概要

派遣先の研究室において週に2回のミーティングと、派遣先の指導教員と本学における指導教員との3者のミーティングを週1回行っていました。派遣先の研究室の学生に交じり行う週2回のミーティングでは研究に必要なデータの観測を手伝ってもらう学生に対し、どんなデータが必要か、データ取得における問題点、設定値などを話し合いにより決めました。派遣先での特有な観測データのため、自分ではわからないことも多かったのですが、協力してもらい、最終的には1週間分の観測データを得ることができました。また、初めの1週間は派遣に関する契約などの事務処理や派遣先における生活に関する身の回りのものを揃え、派遣先の指導教員に派遣先で行いたい研究の内容を理解してもらうことに費やしました。2週目からは提案手法をより具体化するために、A4サイズ2枚程度の提案書を作成しました。提案書には、1か月という短い期間において研究をスムーズに行えるように、研究の進め方をフローチャートにし、構想を整理すべく従来技術の問題点や提案技術のアルゴリズムなどを記しました。また本研究では、無線周波数のセンシング結果を実際のコグニティブ無線に活かす手法として、既存システムの状態遷移確率をSTR、既存システムのチャネル占有率をCORとして無線周波数を有効に利用できるよう適したチャネルを選択する手法について検討しています。そこで、これに並行して、実環境における観測データを提案手法の評価時に用いるため、観測する周波数帯に割り当てられている既存システムについてシステムパラメータなどの仕様を調査しました。提案書の作成により、提案手法における問題点、研究を遂行する上で想定していた仮定の実環境における不適切さや細部に対する思案の欠如などが浮き彫りになり、提案書を基にその後の研究の進捗や論文の原稿作成においてもとてもスムーズに行うことができました。3週目以降は提案手法を計算機シミュレーションで評価するため、c言語を用いたシミュレーションプログラムの作成を開始しました。もともと本学での研究に用いていたプログラミング言語がc言語だったのですが、当たり前のように派遣先ではc言語の環境がなく、プログラム作成のための環境作りから始めました。最終週では、観測データの取得に加え、派遣先での研究成果を外部で発表するために、ある国際会議への投稿ないしは発表を目標にし、その会議に向けた投稿用の論文の作成を開始しました。また、派遣先の指導教員に原稿の添削を依頼し、添削結果をもとに原稿の修正を行っています。

研究成果概要

今回の研究交流に参加するにあたり、事前に研究テーマを持ち込む準備をしていました。このテーマを基に研究を進める予定でしたが、派遣先において、コグニティブ無線の分野に精通している指導教員とミーティングを重ねるうちに、さまざまな方向性が見えてきました。例えば、考えてもいなかった問題やそれに対するアプローチの方法、また、提案手法の具体化や有効な技術として評価されるためにどうすべきか、論文作成に対するモチベーション、章の構成や書き方など、今までは曖昧に行ってきたことの基本的なことから今後の研究活動において重要であるポイントについて一から学ぶことができました。

また、今回の派遣により、得られた成果は対外向けに国際会議への投稿を予定しています。今回の派遣では、日本国内では取得できない貴重な観測データを得ることができました。コグニティブ無線の研究分野に限った事ではありませんが、米国では最先端の研究が行われていることが多く、また世界に対する影響も量り知れません。それ故、米国内における観測データを用いた研究はそれだけでも世界中の研究者の興味を引きます。さらに、コグニティブ無線の分野においては、世界共通の無線資源不足に対する抜本的な解決策として世界中から注目され、特に米国では世界に先駆け実用化しようと米国政府も動きだしています。これは、米国特有な気質によるもので、新しい挑戦にとても積極的で、挑戦しうる自身も持ち合わせているためだと私は思っています。このため、米国で使える技術は世界中で利用されうる技術であると言え、今回の派遣で得られた観測データは大変意味のあるデータだと言えます。このデータと実際に実用化への動きを国内で体験している今回の派遣先の指導教員の指導のもと、築かれた研究成果を国際会議で発表することで、世界に対しても大きなインパクトとなり、同時に本学への貢献にもつながると考えています。

国際化に関する所感及び提言

実際に1か月の滞在を通して感じたことは、日本でも海外でも自分自身に求められていることは変わらないということです。研究成果を出すことだけは、どこにいても同じように求められます。ただし、アプローチの仕方はそれぞれの指導教員によって異なり、それを体験できることはそうそうないことなので、とてもいい経験になりました。

また、1か月では英語を話す能力は身につきませんでしたが、カタコトの英語を話す勇気は持てました。研究室の学生だけでなく人とコミュニケーションをとる重要性や、文化の違いを実感しました。1か月で国際的な人間になれるかどうかは人によっても異なり、また、日本にいるだけでは国際的になれないというわけではないと思いますが、他国の文化を体験し、受け入れることは大変重要なことであると再認識しました。短い旅行では体験できないことを、暮らしてみて初めて認識することも多く、日本に帰国してからもそれを認識することがあります。おそらく、実際に経験してみないと分からないと思いますので、多くの人に体験してもらいたいです。

作成日:2011年8月 5日 / 更新日:2012年3月 8日